Name: オネーギン (岩波文庫 赤604-1) (日本語) 文庫 2006/9/15 プーシキン (著), 池田 健太郎 (翻訳)
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オネーギン (岩波文庫赤604-1) (日本語) 文庫 2006/9/15 プーシキン (著), 池田健太郎 (翻訳)

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悲しくも美しい物語【内容要約】主人公は、自分が最も求めていることを見出せないバイロン的なオネーギン。隣村に住む、純情可憐で素朴なロシア的少女、タチヤーナはそんなオネーギンに初めて恋をする。彼女は彼を愛し、彼に自身の想いを綴った手紙を渡す。しかし、彼女が彼の中に見出したのは「冷酷」の二文字のみ。彼はタチヤーナの純情さに心動かされたが、自身の冷め切った自由をなおかつ失うことを嫌ったのであった。そんな節にある事件が起き、オネーギンは村を離れモスクワに移る。長い年月が過ぎ、モスクワのある夜会で彼は偶然にもタチヤーナと再会するが、彼女は公爵夫人となっており、人を威圧するほどの品位を身に着けていた。オネーギンは彼女への愛に目覚め、今度は彼から彼女に愛の手紙を渡す。しかし時はすでに遅かった。公爵夫人となった後も、密かにオネーギンを想っているタチヤーナはその手紙を読み、ひとり静かに涙を流しているところをオネーギンに見られるも、ついに彼の愛が受け入れられることはなかったのであった。【批判と感想】小説中に「若い時に若かった人は仕合せである。よい時期に熟成した人は仕合せである。（中略）だが、自分の青春が空しく過ぎたと思うのは、何と淋しいことだろう。」という一節がある。これは早くから人生に対してまるで熱意を失っていたオネーギンに対するものであるが、私はこの一節が強く印象に残っている。オネーギンはモスクワでタチヤーナに再開した後、彼女に夢中になり、彼女を追い回すが、彼女の方は一向につれない態度をとるばかりであった。村に住んでいた頃とは立場が逆転している様子が描写されていた。私が疑問に思ったのは、タチヤーナにとって初恋の人が突然眼前に現れたら、普通平然としていられようか？ということだ。彼女なりの苦悩や葛藤もあったに違いないので、その辺の心理描写がもう少しあっても良かったように思う。「よい時期に熟成した」タチヤーナと、早熟し遅くにやっと大切なものに気づいたオネーギンの愛のすれ違いが私の心を痛めた。悲しくも美しい物語で私のお気に入りの一作となった。最後に『オネーギン』はロシアの誇るA.C.プーシキンの代表作である。この本は散文で訳されているが、プーシキンによる原文は十四行を一詩節とし、約四百詩節からなる「韻文小説」である。彼が今でも多くのロシア人に愛され、天才と呼ばれる理由が分かったような気がした。

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